食えない音楽家。五枚の源泉徴収票の先の、体当たりの自由までの道。


わたしの机には、5つの会社から届いた源泉徴収票が揺らめいていた。



さて、さて。

これは昨年、5つの会社で働かせてもらっていたという事を意味している。当たり前だけれど。

週7日なにかしら働いて、夜は演奏して、
帰宅するとレッスンの準備をして、

ひと月10万円程度。



「前田サンって何が趣味なのー?」

「音楽をやっています」

「あら、食べられないからここで働いてるのね。大変だものね。」

………………………………………………う。」



音楽レーベルを始めて、ひとつのタイトルをリリースしようとしたら、最初
100万単位のおかねが必要だった。
(もちろん、人にもよると思います。)


放課後の子供たちが遊び回る職場の、ロッカーのーの片隅で、悔しくて身震いした。


コンビニエンスストアで「副業」の本を見かけたので、なけなしのお金で友達と購入した。

「○ックオフの全商品を買い取って転売したら」「ふるさと納税で勝つコツ」
「流木ハンターになろう」。

どうしたものかなぁ・・・。



転機は、ベルリンへ旅行に行った時にやってきた。







料理人とミュージシャンのカップル、ゲイのカップル、そして日本人の女の子の暮らす家で寝泊まりをさせてもらった。

このラインナップだけで、もうワクワクだ。



ベルリンは、貧乏だけれど、クリエイティブだった。



□毎晩のように近所で繰り広げられるライブを見に行ったり(どれもビール代だけで無料だった。)




□アウトバーンという高速道路を自転車で走るイベントに参加したり(無料)




□一流の演奏をするとされてる、ベルリン・フィルを見たり(子連れ、お年寄りの優先席が配置されていて、昼間は無料だった。)


公園で泣いている人がいても、それすらも"個性"という中では、当たり前の光景だった。




そのとき、わたしは、会社員でも、先生でもない。


音楽をやっているのだから、「ミュージシャンです

それでよかった。許された気がした。


シンプル。




ひとつの都市に数日間滞在したくらいで、その街のなにが解るってわけでもない。


でも、影響を受けるのは許してくれるかしら?



生活の為の仕事は、全部辞めよう。


少なくとも、レーベルの仕事ですといえるものだけで食っていこうと、胸の中で決意した。


ピンと来ないものは直感に従う


きっと、嫌いなものを切り捨てていけば、おのずと好きなものしか残らない。

そして、もっともっとすぐそこにある、周りのお友達や、家族や、大好きな音楽仲間との時間を大切にしていきたいと思っていた。



演奏しよう!と意気込んで行ったベルリンだが、結果的にはしなかった。


まずは身近な人に、出来る事をしゃべる

なにしろ、何も知識が無い状態でこの仕事をスタートさせたので、何をして良いかまったく分からない。


曲を作る事、アレンジする事、ミックスする事、ドラムを叩く事。
PAをしていた事、文を書く事、写真を撮る事、それをWebsiteにはめる事。

そんな事をポツポツと回りに話し始めた。




現実、生活を支えるのは音楽以外の仕事だったため、「何の為に独立したんだろう?」という思いに悩んでいた。

そんな中で気付いたのは、"失う事を異常に恐れている" ということだった。

「失う物はまだ何も無いじゃないか。失敗しても、後戻りはしないと腹をくくって曲を書けばいいではないか」


心が決まったその夜、
BGMを書かせてもらった企業動画が、大賞を取った。



旅に似合う音楽

どこでも予定は空いています!」といえるようになった事で、本当に徐々にだけれど、仕事が入るようになっていった。

平日の昼間には、リサーチの為によく図書館(蔦○書店)に居る。

どの本を選ぶかは、無限に選択肢が広がっていた。

どの本を選ぶかこれからどうするかに繋がっていると思うと、その重さに足がすくんだ。



周りの人の手元を見渡してみた。
視界の中にはいつも、旅行雑誌が写った。

旅行・・世界一周・・・旅のガイド。


「そうだ、旅に似合う音楽なのだから、旅行コンテンツだ!」





上を見ればキリがない。

誰かみたいになろうとしても、全然なれない。



ロッカーのーの片隅で、悔しくて身震いしていた "食えない音楽家" が、


精一杯、今日もつくり続けるだけなのだ。






 ライター 前田 紗希 



 作曲家/ドラマー、旅と音楽をコンセプトにした音楽レーベル "studio iota label代表。
 旅とカメラとが好きな、コンパクト女子。
 ドラムセットに隠れて姿が見えないため"人形劇"と評される。
 やたら一本気な性格で、毎日創ることばかり考えている。


Founder and representative of studio iota label, a music label based on the concept of cinema, travel and music.

A petite woman who loves cameras and travel.Often considered to be part of puppet shows as she can generally be seen hiding behind drum sets.She has an incredibly focused personality and loves to think constantly about creating something every day.
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【studio iota label】

流れるイオタが立ち上げたレーベルstudio iota labelではCDの制作・販売、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っている。


流れるイオタ [旅に似合う音楽]


【ウェブサイト】http://www.studio-iota.com/
【Facebookページ】https://web.facebook.com/iotabi
【note】https://note.mu/nagareruiota
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About イオタビ studio iota label

【イオタビ】は、ガイドブックには載ってない観光ガイド! 日常に転がるちょっと不思議な「知ってる?」を価値のあるのものに。